女性と肉体関係を持って・肉体関係を持とうとしたところ、女性の交際相手を名乗る男性が出てくるなどして、様々な名目で脅される美人局(つつもたせ)という恐喝行為・詐欺行為があります。
この美人局の被害にあったときには、弁護士に相談するのが良いのでしょうか?
このページでは、美人局とはどのようなものか、弁護士のほか相談すべき相手についてお伝えします。
美人局とは
美人局とは、男性が女性と肉体関係を持ったり・肉体関係を持とうとしたことを理由に相手を脅したり、騙したりするものです。
その手口としては次のようなものがあります。
- 女性と肉体関係を持ったラブホテルなどに男性が乗り込んでくる
- 女性と肉体関係を持とうとラブホテルなどに入ったところに男性がいる
- 女性と肉体関係を持つためにラブホテルに入ったところを写真に撮られて妻や職場にバラすと脅される
- 肉体関係を持った女性が妊娠したなどとして訴訟をちらつかされる
などというものです。
中には、女性が未成年者であるような場合には、肉体関係を持った男性側も淫行条例などで処罰される可能性もあるため、泣き寝入りを余儀なくされることがあります。
美人局は別に夫婦である必要はない
美人局はかつては、加害女性が夫などとグループになって行うことが多かったため、用語の解説として囮となる女性と男性が夫婦であるような説明の仕方をしていることがあります。
例えば美人局のwikipediaでは、
妻が「かも」になる男性を誘って姦通し、行為の最中または終わった途端に夫が現れて、妻と関係したことに因縁をつけ、金銭を脅し取ることを指す。夫婦関係にない男女が(夫婦であると偽装して)同等の行為を行った場合も類推してこの名で呼ばれることがある。
と解説されています。
しかし、特に男女が夫婦の関係、あるいは夫婦の関係であると偽装している、という必要はありません。
美人局との接触が行われる場所
美人局とはどのような場所で接触することが多いのでしょうか。
従来は、飲み会やキャバクラ・ナンパ待ち・メンズエステなどの女性と接触する可能性があるような場所で接触してくるケースが多かったようです。
しかし、昨今はマッチングアプリやSNS・匿名掲示板を使って接触してくることが非常に多いようです。
美人局とおやじ狩りとの違い
金銭を持っている男性をターゲットする点で、「おやじ狩り」と呼ばれる犯罪行為をイメージする方も多いのではないでしょうか。
おやじ狩りという言葉は、1996年6月に千葉県で発生した強盗事件について、加害者である少年たちが使っていた言葉に端を発するもので、これらは主に路上での強盗や、酔っ払ったサラリーマンなどに対する強盗行為について言われるものです。
しかし、中にはグループの中の女性が性行為に応じるかのように誘って、他の男性などが強盗をすることもあり、中には美人局と共通する行為をする者がいます。
美人局とハニートラップの違い
美人局と「ハニートラップ」と呼ばれる行為とはどのような違いがあるのでしょうか。
ハニートラップとは、女性スパイが行う諜報活動のことをいい、スパイ映画での言葉が一般に広まったもので、一般に広まった今では、異性に対して色仕掛けで罠をしかける行為全般を言う様になりました。
ハニートラップでは、
- 企業の幹部相手に機密情報を聞き出す
- 相手を思うがままに操る
といったことを行い、その中には金銭の要求をするものがあります。
そのため、美人局はハニートラップの一つの種類であるということがいえるでしょう。
美人局にはどのような犯罪が成立するか
美人局にはどのような犯罪が成立するでしょうか。
まず、肉体関係を持ったこと・持とうとしたことを理由に、脅迫することは、刑法222条の脅迫罪が成立し、2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処せられます。
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
ここにいう脅迫行為とは、人を怖がらせる(畏怖させる)に足りる害悪の告知のことをいいます。
またその対象は、生命・身体・自由・名誉または財産に対して害を食える旨を告知するものです。
「殺す」・「殴る」・「刺す」などの害悪の告知は生命・身体に対するものですし、「会社に言いふらす」というような場合には「自由」に対するものです。
なお、これらの脅迫行為で、本人が自由に意思表示ができなくなってしまった上で、相手の金銭を脅し取った場合には、強盗罪が成立する可能性があります。
(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
たとえば、脅迫行為をした結果、本人が気を失ってしまい、その機会に財布の中のお金を持っていくような行為は強盗罪が成立しえます。
強盗行為で被害者が怪我をした・死亡したような場合には、強盗致傷罪・強盗殺人罪が成立しえます。
(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
脅迫した上で義務のない行為をすること(例:土下座をさせる)をすると、刑法223条の強要罪が成立し、3年以下の懲役刑に処せられます。
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
美人局の目的の多くが、相手を脅して金銭を支払わせることで、相手を脅して金銭を支払わせた場合には、刑法249条の恐喝罪によって10年以下の懲役に処せられることになります。
(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
なお、美人局の中には、恐喝ではなく相手を誤信させてお金を騙し取る場合もあるので、刑法246条の詐欺罪が成立することもあります。
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
たとえば、関係を持った女性が妊娠したと偽って金銭を請求するような場合には、詐欺罪が成立しえます。
なお、性的関係を持った女性が未成年者であった場合には、いわゆる淫行条例と呼ばれる各都道府県の条例によって処罰されることになります。
上述したように、美人局が接触する方法としてマッチングアプリやSNSを利用するケースが非常に増えています。
マッチングアプリで知り合った女性がさらに未成年者を紹介してきたり、未成年者でも利用できるSNSを介して、未成年者が美人局の加害女性になるケースが増えています。
東京都青少年の健全な育成に関する条例
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
相手が仮に美人局であるような場合でも、この条例に違反した事実はかわりません。
解決にあたって、この点についての刑事責任を問われる可能性は否定できません。
とはいえ、前科がない状態から、突然逮捕されて2年の法定刑の上限の懲役刑を科せられるわけではありません。
そのため、早めに美人局の被害にあっていることの客観的証拠をあつめるなど、刑事罰に問われないようにするべきです。
美人局の場合の女性の夫に慰謝料請求権は発生しない
美人局も肉体関係を持った場合には不倫には該当します。
美人局を仕掛けた女性の夫は、美人局のように肉体関係を持つことを承諾している以上、精神的な苦痛があるとはいえず(あるとしても法的に保護するに値しない)、慰謝料請求権は発生しません。
なお、慰謝料請求権が発生しない場合でも、請求をしてくる可能性自体は否定できません。
たとえば、免許証をコピーされたような場合には自宅が特定されるので、郵便物で請求してきたり、ケースによっては内容証明郵便を送ってくることもあります。
民事訴訟を起こす可能性も0ではありません。
この場合でも、美人局であることを立証できれば、請求を棄却してもらえます。
美人局の被害にあった人は不倫にあたる可能性はある
美人局の被害にあった人が既婚者である場合、被害者という立場でも、その妻との関係では不倫にあたる可能性はあります。
この場合、民法770条1項1号の不貞行為にあたるため、妻側から離婚の請求をされる可能性があります。
美人局の被害にあった場合には弁護士に相談すべきか?他には?
では美人局の被害にあった場合には弁護士に相談すべきなのでしょうか・
金銭の請求をされている段階では弁護士に相談する
金銭の請求をされていて、まだ支払っていない場合には、なるべく早く交渉を弁護士に依頼するようにしましょう。
弁護士であれば、相手の請求内容を基礎づける事実があるのかを、事実関係にそって淡々と交渉してくれるので、美人局であるような場合に請求に断固対抗してくれます。
美人局としても、相手が誰にも知られずに解決を希望している相手でなければ、強行にお金をとろうとしても成功しないばかりか、弁護士が出てきてきちんと対抗しようとしている場合には、自分たちが逮捕されるおそれが発生するため、請求を諦めることが期待できます。
なお、詐欺被害や刑事告訴については行政書士も相談を受けていることから、美人局についても行政書士に相談してみて良いのではないかと考える方もいます。
しかし、それ以外についての権限がないので、例えば相手と交渉をしてもらったり、民事訴訟に対応してもらったり、刑事事件になった場合の警察・検察への活動などについては全くタッチできませんので注意しましょう。
美人局が未成年者である場合には必ず弁護士に相談を
美人局が未成年者であるとした場合には必ず弁護士に相談をしましょう。
しつこく請求がくる場合には、未成年者であると知って肉体関係を持ったことについて、淫行条例違反の弁護活動をしてもらいながら民事上の請求に対応することになります。
そのため、かならず弁護士に相談・依頼して対応するようにしましょう。
すでにお金を払ってしまった場合には調査会社に相談を
問題は、すでにお金を払ってしまった場合です。
この場合、相手が本当に女性の夫だったのか、未成年者と主張していた女性が本当に未成年者だったのか、など確かめて、美人局であったことや、民事手続きをするために相手がそもそも何者なのかを調査する必要があります。
そのため、調査会社(探偵)に相談するのが良いでしょう。
この調査には高度な調査能力が必要なので、まずは東京中央信用調査にご相談ください。
警察に相談するのはタイミングを見計らって
美人局は上記のような犯罪に該当するので、警察に相談して解決すれば良いのではないでしょうか?
しかし、警察はそれが美人局のような犯罪であるという確信がない段階では、慰謝料請求などの民事上の争いであると考えてしまい、民事不介入の原則によって対応を拒否することもあります。
逆に、未成年者への淫行が疑われるような場合には、相談した本人が捜査の対象になることも覚悟しなければならないのは上述した通りです。
詐欺・恐喝であることを明白にして、警察の協力が必要かどうか、弁護士と相談しながら行うようにしましょう。
まとめ
このページでは、美人局とはどのようなものか、美人局の被害にあった場合には弁護士に相談すべきなのか、などについてお伝えしました。
美人局で相手と交渉が必要な場合には基本的には弁護士に相談すべきです。
ただ、相手のことについて調査をする必要がある場合などには、東京中央信用調査では、24時間無料で相談を受け付けておりますので、いつでもお気軽にご相談ください。