執筆者プロフィール
- I.Nさん
- 年齢:37歳
- 被害金額:1000万円
- 詐欺内容:結婚詐欺
マッチングアプリで知り合った元婚約者と付き合い始めて3ヶ月ほどが経ち、結婚を前提に私が住む部屋で同棲生活を始めました。
私は職業柄、日勤と夜勤シフトがあるのでシフトによっては部屋を不在にする生活を送っていたこともあり、同棲すれば防犯的にも安心できるかな、と思っていました。
元婚約者も仕事で出張が多いこともあり、同棲といっても週2~3日、少ないと1週間以上も部屋に帰って来ないこともありました。
お付き合いを始める前から、お互いのライフスタイルは理解しあっていたのですが、今となっては最初から私を騙すつもりで自らを偽っていたんだと確信しています。
経営者の彼と私の将来
元婚約者は医療機器関係の会社を経営しており、同棲当初は食事やプレゼントすべて元婚約者が負担をしてくれました。
成金のような羽振りの良い振る舞いをしていたわけではなく、ささやかながらちょっとしたことで私を気遣ってくれる気持ちがすごく嬉しく、私自身も彼とだったら結婚したいと次第に気持ちが強くなりました。
同棲とはいっても二人で過ごす時間が多くあるわけではなかったんですが、たまに長く一緒に過ごせる日は二人で旅行に行ったり、将来のことを話し合ったりとお互いが気を遣わずに素でいられる生活でした。
ただ私と一緒にいるときでも頻繁に携帯に誰かから連絡が来て、そのたびに私に聞こえないように離れた場所で人目を気にしながら電話をしていました。
仕事が忙しいと私も聞いていたので、取引先とか会社関係者からの連絡を思いさほど気には留めていませんでしたが、後々分かったのは私と同じような境遇の他の女性からの連絡だったんだと思います。
携帯電話も使い分けており、私が知っているだけでも3台は普段から持っていました。
相手から結婚とお金の話が・・・
元婚約者と同棲を初めて1年くらい経過したころ、彼のほうから結婚の話が出てきました。
私としても年齢的なこともあり結婚願望が募っていましたので、元婚約者からの結婚の話はとても前向きに考えていました。
先々を考えて、まずは両親や兄弟に結婚をするかもしれないと報告をし、両親に彼を紹介することも納得してもらえました。
元婚約者にそのことを伝えた時、本人もすごく喜んでくれていたので実際に両親も紹介しました。
結婚がさらに現実味を帯びてきて、私自身も舞い上がっていたころ、初めて金銭の相談を元婚約者からされました。
今までの付き合いで掛かったお金は全額彼に出してもらっていたのと、結婚が頭をよぎり、これから夫婦になるから助け合わないとという気持ちから、100万円は何の疑いもせずにすぐに貸しました。
実際にこの100万円は、貸してから1ヶ月も経たずに全額返ってきました。
元婚約者に対してこの時点では何の疑いもなかったので、返ってきて安心というよりも、仕事が上手く回って良かったなと思いました。
300万円の借用書
ほどなくして、また同じような仕事関係の支払いでお金を貸してほしいという相談がありました。
今度は300万円と金額がさらに上がり、少し躊躇すると、結婚資金として個人的に貯めていた定期預金を解約して本人も資金繰りをしたけど、どうしても300万円が足りないということでした。
300万円という金額は大金です。
さすがに簡単には出せるお金ではないのと、彼を信用していないわけではないけど万が一を考えると正直言葉だけではという不安がありました。
私の不安を悟ってか、元婚約者から借用書を書くから信用してくれと懇願されました。
前回と同様に1ヶ月で返すということでしたが、今回は期日になっても返ってきませんでした。
彼からさらに500万円の要求が・・・
300万円の返済を元婚約者に迫ると、急に彼からさらにお金を追加で500万円を貸してほしいと切り出されました。
今回の300万円も返ってきていないのに、さらに500万円です。
その理由が300万円の返済のために、新たに仕事を発注するための資金が足りないということでした。
その500万円が無いと従業員の給料も払えなくなり、最終的には倒産して自己破産をせざるを得ないと泣きながらに説明をしてきました。
両親を紹介してもらった手前、また私に対する責任を果たし、結婚生活をより安定させるためにもどうしても助けてほしいと。
期待と希望を胸に500万円を貸した
確かにこの時は元婚約者を愛していましたし、何とか助けてあげたいと思っていたので、心に隙がありました。
私も元婚約者との将来を考えると、今お金を用意しなければ二人ともダメになってしまうと錯覚してしまったことは事実です。
本当に貸したお金も返ってきて仕事も安定するのね、と念を入れて確認すると嘘偽りは一切ないと私の目を見てしっかりと答えてきました。
二人で涙ながらに将来の約束を誓い合い、期待と希望を胸に500万円という大金を元婚約者に渡しました。
彼も本気だということをアピールするかのように婚姻届けを用意し、まずは私たちだけサインを済ませて、この件が落ち着いたら保証人を立てて入籍しようと話してきました。
この時点で元婚約者に貸したお金は800万円です。
本当にお金は返ってくるのだろうか・・・
お金がいつ戻ってくるかという不安な日々が続きました。
仕事も気が気ではありません。
元婚約者も今まで以上に仕事が忙しいとのことで、部屋に帰ってくる日はだんだんと減ってきました。
彼も頑張ってるんだからと、半ば強制的に心に言い聞かせて、信じるという気持ちを持ち続けていました。
500万円を貸してから3ヶ月ほど経つと、仕事が軌道に乗ってきたということで100万円がまずは返ってきました。
100万円でも返ってきたので、内心ほっとしていました。
そんな頃にまた300万円を貸してほしいと言われました。
その時の表情は今でも忘れられないほど、自信に満ちた表情でした。
暗い話ではなく前向きな話で、あと300万円だけ事業に追加すれば、残りの700万円は2ヶ月ほどですぐに返せる、それにプラスしてお金を300万円ほど渡せるから何とか貸してほしいと。
プラスのお金が欲しかったわけではなかったんですけど、その後に彼から言われた一言で心が揺らいでしまいました。
待ちに待った入籍
事業が安定するのは目前だから、300万円を用意してくれたらすぐに入籍しようと言われたんです。
私たちだけが先にサインをした婚姻届けを持って、私の両親に挨拶も兼ねて保証人のサインをお願いしに行こうと。
実は電話越しでは彼の父親と名乗る人物と話したことはあったんですが、直接会う機会が無く、何度か彼に話しましたが上手くはぐらかされていました。
ただその時は本当に疑う余地もなかったので、彼の言葉を真剣に受け止めていました。
しかもその時は用意周到で、婚約指輪も用意してあり、ちゃんとした正式なプロポーズまでしてきました。
ここまでされてしまった私は、結局その300万円を渡してしまいました。
私を安心させるためか、時間稼ぎか、元婚約者は早々に入籍をしようと切り出してきました。
彼は仕事を片付けて翌日には実家に向かうからと言い残して。
実家に着いたことを知らせると、急な仕事で抜け出せない、どうしても外せない出張で実家に向かえないから、別の日程にしてほしいと言われました。
ただ、入籍については私のほうから話を進めて、婚姻届けにサインだけでも頼むと言われたので了承したんです。
彼も父と電話を替わってほしいということで、前回紹介したこともあったので、電話で入籍について話をしていました。
私側ができることは一通り終わらせ、婚姻届けを手にし、実家から戻り彼と会いました。
一度も聞いたことのない女性の声
彼の両親を近日中に会ってもらうという話をされ、数日が経った頃、突然私の携帯電話に非通知で電話がありました。
電話に出ると相手は女性の声でした。
その女性は彼の同棲相手を名乗る女性でした。
どうやら彼の携帯電話を盗み見て、私を浮気相手だと思い電話を掛けてきたようでした。
私は頭が真っ白になってしまい何のことか理解ができません。
相手の話している内容も、元婚約者が私に今まで話してきたこともすべてが理解不能でした。
何も話せずにいるとその女性は、もう彼とは会うな、連絡も取るなと言い残し、一方的に電話を切られてしまいました。
一瞬の出来事で頭の中で整理ができない状況の中、元婚約者に一部始終の説明をすると、まずは会って話をしようと切り出されたので、会う約束をしました。
でも、その後彼と会うことはありませんでした。
信じていたのに・・・
電話を掛けても電源が入っていない。
LINEを送っても既読がつかない。
連絡が取れない日々が続き、ようやく目が覚めました。
元婚約者に騙されていたということに。
仕事が忙しく、出張が多いからと部屋に帰ってこないこと。
最終的には私のお金を騙し取るために嘘をついていたこと。
すべては用意周到に仕組んでいた嘘だったんだと気付いた時には、もう彼は連絡が取れません。
両親を紹介し結婚まで約束していたので、そんな両親にはお金も騙し取られたことは言うに言えません。
精神的なショックが大きすぎて誰にも相談できない。
お金を騙された後悔もそうですが、何よりも愛した相手が結婚詐欺を働いていた事実を受け止めきれないことが一番の苦痛です。
いろいろとカウンセリングを受けて、今はようやく落ち着きを取り戻しつつありますが、思い出したくもない過去であることは間違いありません。
一生心に残る傷であることは確かです。
私のような思いをされる方が少しでも世の中から居なくなるように、今回お話をさせて頂きました。
結婚を理由に心とお金を騙し取る詐欺師に騙されないでください。