結婚をすることをほのめかして、いろいろな理由でお金が必要になるなどして、お金を請求して、そのまま結婚もせずお金も返さない、いわゆる結婚詐欺にあった場合には、どのようにして返金してもらうのが良いのでしょうか。
このページでは、結婚詐欺にあったときに、相手から返金してもらうのに、どのような方法があるかについて解説します
結婚詐欺とは
結婚詐欺とは、詐欺の一つの類型で、結婚することをほのめかして、相手に金銭を要求し、実際には結婚もせず、返済もしないものをいいます。
よくあるケースとしては、
- 結婚前に今ある借金を精算しなければならない
- 独立するのに資金が足りない
- 株・FX・先物取引に失敗し多額の資金が必要になった
などという理由をつけて、相手に金銭の請求をします。
中にはクレジットカードを渡してしまって、勝手につかわれて借金を負うようなケースもあります。
結婚詐欺師とはどこで接触することが多い?
このような結婚詐欺師とはどのような場所で接触することになるのでしょうか。
従来は、結婚相談所などの、結婚を前提とした相手を探しているところに登録をしている人が多くいました。
しかし、結婚相談所などでも身元について調査する、資料を提出させるなど、登録者の身元に気をつけるようになってからは、結婚相談所を通じたものは減っているようです。
結婚詐欺師はどのような人を狙うのか
結婚詐欺師はどのような人を狙うのでしょうか。
女性の場合には、
- お金を持っている
- 恋愛経験が少ない
- 献身的である
- 周りに相談できる相手が少ない
という人が被害に会いやすいようです。
そもそも、女性の場合には、男性に比べて相対的に収入が低いことが多いので、お金がない人に詐欺を行っても徒労に終わってしまいます。
次に、恋愛経験が少なく献身的である女性はターゲットにされやすいです。
「この人には自分がいなきゃ駄目だ」というような勘違いをさせるには、恋愛経験が少なく献身的である女性のほうが容易であるからです。
結婚詐欺師も最初から大きな金額の請求をするわけではなく、最初は「持ち合わせがない」などを理由に飲食店の会計をお願いしたり、仕事のための少額の費用を工面するようにお願いしてくる程度です。
しかし、徐々にお金をあげるのが当たり前になってくると、大きなお金の請求を繰り返し行うようになります。
こうなってくると、自分は金づるにされているのでは?と悩むことがあるのですが、周りに相談できる人がいれば結婚詐欺師との関係を打ち切るのが容易でも、周りに相談できる人がいない場合には、なかなか愛情が偽物であることに気づけないことがあります。
一方で男性の場合には、
- お金を持っている
- 社会的地位がある
- 恋愛経験が少ない
- 情に弱い
という人が結婚詐欺師に狙われやすいそうです。
お金を持っている・恋愛経験が少ないほうがターゲットにされやすいのは、女性の場合と同様です。
男性の場合には、職業とともに社会的地位がある人の場合には、恋人として友人・職場に紹介することが多いので、関係を維持するための金銭的請求をしやすいということがあるようです。
また、情に弱い人である場合には、苦労している境遇にあるような女性を保護することに生きがいを見出してしまうこともあり、その結果たくさんお金を使ってしまうことがあります。
結婚詐欺の法律関係
結婚詐欺の被害にあった場合の法律関係を確認しましょう。
結婚詐欺は民法上の詐欺にあたる
結婚詐欺は民法上の詐欺にあたります。そのため、金銭の贈与契約を取り消すことが可能です(民法96条1項)。
その結果渡したお金は不当利得返還請求権として返してもらうことができます(民法703条以下)。
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
結婚詐欺は民法上の不法行為にあたる
結婚詐欺は民法上の不法行為にあたります。
そのため、被害者は結婚詐欺師に対して損害賠償請求が可能です(民法709条)。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
結婚詐欺の場合の慰謝料の相場
結婚詐欺の場合の慰謝料の相場としては、50万円~200万円程度になることがあります。
慰謝料の相場に大きな幅があるのは、結婚詐欺の態様によって精神的苦痛の感じ方に差があるためです。
慰謝料の金額に影響する事情としては次のようなものがあります。
- 被害金額
- 交際期間の長短
- 詐欺師が他にも異性と交際をしていたかどうか
- 結納・引っ越し・職場の退職など、結婚準備を行ったかどうか
- 被害者が女性の場合には妊娠しているかどうか
被害金額が多ければ多いほど精神的苦痛が大きいので、慰謝料が増える傾向にあります。
交際期間が長ければ長いほど精神的苦痛は大きいので、慰謝料が増える傾向にあります。
結婚詐欺師が他にも異性と交友しているような場合には精神的苦痛はより大きいといえるので、慰謝料が増える傾向にあります。
結納や結婚のための引っ越し・職場を退職しているなど、結婚準備を勧めていたような場合には精神的苦痛が大きいので、慰謝料が増える傾向にあります。
被害者が女性の場合、妊娠をしている場合には、精神的苦痛が大きいといえるので、慰謝料が増える傾向にあります。
結婚詐欺は刑法上の詐欺罪にあたる
結婚詐欺は刑法上の詐欺罪にあたります(刑法246条)。
刑事事件となった場合には、10年以下の懲役刑が科される可能性があります。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
執筆者プロフィール I.Nさん 年齢:37歳 被害金額:1000万円 詐欺内容:結婚詐欺 マッチングアプリで知り合った元婚約者と付き合い始めて3ヶ月ほどが経ち、結婚を前提に私が住む部[…]
万が一結婚詐欺が刑事事件にならなかった場合には婚約破棄として損害賠償が可能
刑法上の詐欺として処罰するためには、詐欺罪が予定している構成要件と呼ばれる行動をすることと、それを検察が証明できることが必要です。
倫理的におかしいところはあっても、ケースによっては騙したとまではいえず、詐欺罪に問われないケースも中にはあります。
このような場合でも、婚約が成立したと認められて、婚約破棄をしたものと評価できる場合には、不当な婚約破棄を理由として損害賠償請求が可能な場合があります。
結婚詐欺をした人に対して返金を求める方法
結婚詐欺を行った者に対して返金を求めるための手続きには次の3つが考えられます。
相手に対して民事裁判を起こし強制執行をする
結婚詐欺を行った相手に対して民事裁判を起こして強制執行をするのが1つ目の方法です。
上述したように、結婚詐欺を行った者に対しては、取り消しをしたり、直接不法行為に基づく損害賠償責任を問うことができます。
結婚詐欺を行うような者ですので、任意に返還をしてくれることは期待できないので、民事裁判を起こす必要があります。
この裁判で結婚詐欺であるとして勝訴した場合には、相手の財産に対して強制執行をして、お金を返してもらうことになります。
裁判で結婚詐欺を認めてもらった上で、相手に強制執行の対象となる財産があることが前提になるので、この方法だけで被害を全額返してもらえることは期待できません。
振り込め詐欺救済法に基づく口座の凍結と払戻し
詐欺に使われた銀行口座については、振り込め詐欺救済法によって凍結することができ、預金保険機構の手続きを通じて現金を被害者に配当してくれる制度があります。
結婚詐欺の被害にあったことを警察に伝えて、警察と連携して口座を凍結してもらうことで、その口座に十分お金があった場合には、払戻してもらうことが可能な場合があります。
このとき、被害者が複数居る場合には、被害にあった金額の割合に応じて返金されることになるので、被害者が多数いるようなケースでは、全額返金してもらうのが難しいケースもあります。
[振り込め詐欺等の犯罪により、金融機関の口座に振り込まれ滞留している犯罪被害金を、被害に遭われた方に支払う手続き等につい…
刑事事件になった場合には被害弁償を受けられる可能性がある
上述したように、結婚詐欺は刑事事件になる可能性があります。
刑事事件になった場合、被疑者となった結婚詐欺師は、起訴されないように・起訴されたとしても情状酌量の余地ありとして減刑してもらえるように行動します。
具体的には、反省を示すために、被害者に対して被害弁償をすることがあります。
結婚詐欺師にお金があれば全額を、お金がない場合でも分割して返済をしたり、ケースによっては親族が返済のためのお金を建て替えてくれたりします。
結婚詐欺の被害にあった場合に被害者がすべきこと
上記のような返金をするために必要な行動としては次のようなことがあります。
早めに相手の身元について調査する
結婚詐欺は、それが詐欺であると立証することが難しいケースがあります。そのため、早めに相手の身元について調査する必要があります。
大学の友達と起業する、といってお金をねだってきたにもかかわらず、大学を卒業していないような場合には、学歴を偽ってお金を請求していることになり結婚詐欺となります。
また、ケースによっては相手の身元について確信できる情報がないようなケースがあり、このような場合には本名が主張している氏名で正しいのか、といったところから調査する必要があります。
このような調査は、調査会社に依頼して行う必要があります。
事実関係を整理して手続きの準備をする
事実関係を整理して手続きの準備をします。
民事裁判に関する手続きとともに、刑事告訴・被害届の提出を行って、相手の銀行口座を凍結するための手続きも同時に行います。
相手の身元に関する調査とあわせて、いままであったことの事実関係を整理して、どのような法的主張が可能かを整理することになります。
整理すべき事実関係としては、
- 金銭請求をしてきた事実
- 婚約としたといえるような事情
- 婚姻関係を意識させる事情(例:結婚式場の下見にいく)
などの行為をしたかどうかなどにもよります。
法律問題・手続きに関することになるので、詐欺被害の回復に強い弁護士に依頼することになりますが、犯罪被害の回復に強い調査会社に相談しているような場合には、詐欺に強い弁護士も紹介してもらうことが可能なケースもあります。
結婚詐欺に遭わないためには
では、結婚相談所・マッチングアプリなどを通じて結婚詐欺に遭わないためにはどうすれば良いかを考えてみましょう。
身元をしっかり確認してくれる結婚相談所・マッチングアプリを使う
当然ですが、登録している人の身元をしっかり確認してくれる結婚相談所・マッチングアプリを使うようにしましょう。
結婚相談所やマッチングアプリが、どのように本人や経歴などを特定しているかを確認して、登録されている人が確かであるかどうかを確認します。
ホームページやアプリの宣伝に書かれている情報のみならず、口コミ・評判に関する情報も確認しておくとさらに安心でしょう。
自分でも相手に関する情報を確認してみる
以上のような情報を自分でも確認してみるようにしましょう。
最低限、氏名・住所・職場の情報を見せてもらうのが良いでしょう。
免許証であれば、写真の見せ合いを提案するなどしつつ、氏名・住所を確認してみるなどする人もいるようです。
デートの際に家や職場の前で待ち合わせをすることも効果的です。
家族や友人に紹介をしてもらう
家族や友人に紹介してもらいましょう。
きちんとした交際をしているのであれば、自分の家族や友人に紹介してもらうことも不都合は無いはずです。
紹介をしてもらうタイミングとして、自分の家族や友人に紹介をしたタイミングで、逆に紹介をしてもらいたいと依頼してみるのが良いでしょう。
一緒に写真に写ってSNSに上げてみる
結婚詐欺師であるような場合や、相手が実は既婚者であるような場合には、一緒に写真に写ってSNSなどにアップロードされて、自分のことを知っている人に特定されることを非常に嫌がります。
普通に交際していれば問題ないはずなので、一緒に写真に写ってSNSに上げてみましょう。
怪しい点がある場合には調査会社に調査を依頼する
怪しい点があるような場合には、この先交際を続けていく意味でも、お金をだまし取られないようにする意味でも、相手について調査をしてみましょう。
相手の調査ですが、尾行や張り込みなど、専門的な知識や道具・機材が必要です。
バレてしまうと関係悪化してしまったり、すでにお金を払っているような場合にお金を返してもらえなくなってしまうことがあります。
まとめ
このページでは、結婚詐欺の被害にあった場合の返金についてお伝えしました。
結婚詐欺の被害にあったといえる場合には、民事訴訟を起こしたり、刑事告訴・銀行口座の凍結など、いろんな手段によって返金を試みることになります。証拠がなくなってしまうと、返金のための行動がとりづらくなります。
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