「詐欺」にも様々な種類の詐欺がありますが、その中の一つが無価値の土地を、実際には存在しない何らかの地価高騰の噂を持ちかけ不動産を購入させる「原野商法」があります。
この原野商法は昨今では原野商法の被害者から当該土地を買うふりをした二次被害に発展するようになっており、注意が必要です。
このページでは、原野商法など詐欺被害に詳しい調査員が原野商法についてお伝えします。
原野商法とはどのようなものか
原野商法とは、原野のような価値の無い土地を、実際には存在しない地価高騰の噂などを持ちかけ不動産を購入させる詐欺の方法をいいます。
原野商法の名前の由来は、文字通り価値がつきづらい原野に由来するもので、土地の種類は問われませんので、実際には山林・耕作放棄地であるような場合も含まれます。
原野商法の手口
原野商法の手口としては次のようなものがあります。
リゾート開発などの話を持ちかけて売却する
実際に存在しないリゾート開発や高速道路・リニア新幹線の開発計画があるように見せかけて、地価高騰が間違いないと持ちかけて売却する手口は昔からあるものです。
購入を検討している人の多くが都心部にいる一方で、このような計画が持ち上がっているのが非常に遠方の山奥のようなケースが多く、購入をする人が確認・検討をすることが困難であるケースがほとんどです。
また、実際に訪問したとしても、土地があまりにも広すぎて購入対象となっている土地と違う場所に案内されるなどして、誤診してしまうことも多いようです。
また、このような山奥の原野の不動産は、非常に広大であることが多いのですが、広大な不動産は分筆登記という方法で分割することができます。
この分筆登記の制度を利用して、綺麗な区画整理が行われているような風に見せかけて、開発が進んでいる体で売却することもあるので、非常に手が混んでいます。
なお、いちど原野商法の対象になった土地は、上記のように細分化されて販売されているので、購入対象となる地権者が多く、原野商法で本来得ようとしていた利益に近い金額の補償を要求してくることがあるので、用地買収が進みにくくなるということもあり、本当に公共事業が検討された場合でも避けられる傾向にあります。
原野商法の被害が2010年代から急増しています。近年は、過去に原野商法の被害を受けた人やその相続人を狙っているのが特徴で…
水源地開発地であるという話を持ちかけて売却する
2010年代から非常に問題になった原野商法の方法が、大手飲料メーカーが関与した水資源地の開発があるとして、北海道や鳥取県などで原野商法が横行したことがあります。
このような水資源開発のための土地購入については河川法や森林法に基づく規制があり、土地を購入したからといって水源地の開発はできないことのほうが多く、実際に水資源の開発が行われることはありません。
中国人が購入しようとしている話を持ちかけて売却する
昨今では、中国人が購入して自国の拠点にしようとしているなどと持ちかけて、愛国心に訴えて土地を購入させる方法があります。
実際に大手新聞社が中国人が土地を購入して中国の州にしようとしている旨の報道がされたこともあって、このような情報をもとに購入を持ちかけるケースがあります。
なお、このような購入の動きがあることをもって、値上がりする可能性があると、中国の投資ファンドに購入を持ちかけることをする業者もいて、両者の間で天秤にかけて、無価値の不動産を売却しようとします。
外国人も被害者となっている
これらの原野商法ですが、日本人のみならず外国人も被害にあっています。
日本は観光地として外国人に人気でもあることから、日本に別荘などを持つことがステータスであると感じる外国人もいます。
日本についての基本的な情報を持たないまま、不動産を購入するケースも多く、かつお金の使い方も日本人とは異なるため、多くの外国人が被害にあっています。
被害にあわないためには?
このような被害にあわないための方法としては、不動産の価格が大きく乖離していないか、固定資産税評価額を調べることをオススメします。
固定資産税評価額はその不動産が所在する市区町村で調べたり、国税庁のホームページで路線価などをしらべることで可能です。
原野商法にあった場合の対応方法
原野商法にあった場合の対応方法には次のようなものがあります。
クーリングオフ
ごく短期間ですが、クーリングオフを行うことができます。
クーリングオフとは、法律の規定に従って、購入者に特段の理由がなくても一方的に申し込みの撤回や契約の解除ができるものです。
訪問販売や電話勧誘販売のように、執拗・強引な取引方法がとられる一定の取引において法律で定められています。
不動産取引については宅建業法37条の2で8日間のクーリングオフの期間が定められているので、この期間内であればクーリングオフが可能です。
消費者契約法による取り消し
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
引用元:e-Gov法令検索
消費者契約法4条各項所定の事情にあたる場合には法律行為を取り消すことができます。
原野商法の場合には、契約の内容や契約の過程・形態によっていろいろな項目に該当する可能性があり、消費者契約法による取消権を行使することが可能な場合が多いです。
錯誤無効(民法95条)
民法95条は、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものについて錯誤がある場合には、その法律行為は無効である旨が規定されています。
原野商法はこの法律によって無効と評価される場合もあります。
公序良俗に違反する(民法90条)
民法90条は、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効としています。
原野商法のように暴利をむさぼるようなものについては、この法律によって無効とされる可能性が高いです。
取引を仲介した宅建士に損害賠償を求める
以上の方法を用いても、現実に金銭を支払った相手と連絡が取れなくなっているケースがほとんどです。
このような場合に、東京高等裁判所平成31年1月9日判決のように、取引に関与した宅建士に損害賠償を求めて被害を回復したケースがあります。
原野商法の相手を特定して損害賠償を求める
原野商法の相手を特定して損害賠償を求めます。原野商法のような詐欺に関しては詐欺の加害者から金銭を取り戻すのが基本です。
ただ、原野商法のようなケースの多くが相手との連絡が取れなくなっているケースも多く、もはや諦めてしまうケースも少なくはありません。
しかし、詐欺の加害者の特定が得意な調査会社であれば、加害者を特定できるケースがあり、その情報をもとに弁護士に依頼して損害賠償を行うことで取り返しが可能な場合があります。
原野商法は二次被害に注意
ここまで原野商法の形態と、対応方法についてお伝えしてきましたが、原野商法についてはさらに二次被害が発生しているようなケースもあるので注意が必要です。
原野商法の二次被害とは?
原野商法の二次被害とは、原野商法の被害者を狙った詐欺行為です。
例えば、
- 買い手がいますと近づき、測量費用などを請求するも、実際に買い手がいないようなケース
- 別の土地を下取りで取得させる
- 売却先を探すと称して管理委託契約を結び金銭を請求する
などが挙げられます。
1970年~1980年代に原野商法の被害にあった人が、終活などで負の財産の整理をしようとするとこのような被害に合うことがあるので注意が必要です。
まとめ
このページでは原野商法についてお伝えしました。
クーリングオフや消費者契約法などの取り消しの制度はあっても、現実にお金を取り戻すのは困難を極めます。
少しでも多く取り戻すためには、まずは加害者の特定が不可欠なのです。東京中央信用調査では、詐欺被害の解決に向けた無料相談をしております。