認知症の祖母が1,000万の被害…悪質な原野商法詐欺の被害相談

認知症の祖母が1,000万の被害…悪質な原野商法詐欺の被害相談
プロフィール
被害者:認知症持ちの祖母
年齢:92歳
被害額:1.000万

はじめまして。地方で小さな旅館を経営している30代女性です。

今回、高齢の祖母が原野商法詐欺の被害と思われる事態に巻き込まれ、祖母の資産である1000万円が騙し取られてしまいました。

少しでも情報提供になれば、そして同じような被害に遭われている方からの情報が入ってこないか・・・と思い、私なりにまとめた体験記を投稿します。読みにくいところがあれば、すみません。

 

 

元・旅館経営者の祖母

元・旅館経営者の祖母

私の実家は代々、祖母の代から旅館を営んでおります。私はその旅館の3代目の女将として働いておりました。

しかし今年の2月のことです。92歳になる祖母が軽度認知障害と診断されました。

確かに最近、自分で物事を判断する力や、記憶力が低下していました。

足腰はまだしっかりしているのが逆に怖い・・・という感じですね。介護の経験がある方なら、この怖さが分かっていただけるかと思います。

そんな祖母なのですが、本人はまだまだ認知症の自覚がなく、経営にもバリバリと関わっていました。法人にも役員として登記されていますので、名実ともに経営に参加していることになります。

ちなみに私が経営する旅館は、祖母の代から1泊5,000円~ハイシーズンでも1万円行かないくらいの金額帯でお客さんを受け入れておりました。

まあ、サービスも一流とはいきませんし、高級旅館でもありませんが…笑、ひとつ自慢があります。それが温泉。この温泉があるからこそ、地元のお客様にも普段使いしていただけて、うちはまだ持っているようなもので・・・

過去の負債

過去の負債

祖母は今から35年ほど前、温泉が出る可能性があるという触れ込みで紹介された、少し離れた山中にある土地を購入(当時の価格で800万)しました。

しかし、実際に温泉が出たことはありませんでした。購入の経緯は母もあまり聞いていないということでしたが、祖母がどうやら温泉旅館の新店を出すことで、事業を拡大しようとしたのではないかと思われます。

ただ、結局はその土地から温泉が出ることなどなく、さらに言えば土地を紹介してきた人のことも「悪い人ではないから」と文句も言わず、そのまま塩漬けにしていたようです。

そうです、原野商法詐欺です。当時、母は分かってはいたものの、祖母の手前断言することもできず・・・という感じだったそうです。

それから時は流れ、今から15年ほど前。

私が高校を卒業した頃でしょうか。代表者が2代目の母に変わり、その時に「原野商法詐欺に遭った」と結論づけて、その土地の話は何となく、タブーのような扱いになっていたのです。

祖母の黄金時代

祖母の黄金時代

うちは女性が商売をし、男性は全員婿入りで家業を手伝うという典型的な女系の家なんです。

それもやはり、祖母の代から始まったことなのですが・・・もともと祖母は地元でもちょっとした有名人というか、商売人としてはかなり手腕があるというご評価を頂いていたようでした。

そんなこともあって、当時まだ珍しかった女性の当主である祖母に対して、いろいろなお声がけがあったそうです。特にうちの父が若い頃には、祖母の資産を狙って父に近づいてきた色々な人の儲け話もたくさんあったとか。

もちろん、その中には怪しいものも多かったのでしょうけれど、そういったものも全て祖母が的確に判断し、怪しいものは退けていたようなんです。

ですから、私が知る限り、そういった詐欺話に祖母がやられた!という話は例の土地の話以外、聞いたことがありませんでした。

時は流れ、祖母も高齢に

時は流れ、祖母も高齢に

そんな祖母が、やられてしまったのです。

今年の春先、祖母が旅館の事務室の電話を取り、どこかへ電話していたとスタッフから聞きました。これは旅館の番号ではなく、法人の方の回線なので知り合いだとか、お取引先、あとは金融機関の方しか知らないはずの番号です。

お客様対応でなければ大丈夫だろうと、母と私が祖母の認知症の進行を少しでも遅らせるためにと、祖母に電話番をお願いしていたのです。

知症の進行を少しでも遅らせるためにと、祖母に電話番をお願いしていたのです。

この時、祖母は先日発注したばかりでまだまだストックのある「お客様にお出しするお菓子」やいくつかのアメニティを再度、それも通常の経営では考えられない数量を注文していました。

幸い、先方の業者さんから私に直接電話をいただけたので丁寧にお詫びをしてキャンセル処理しましたが、先方からは「大女将もお年ですから・・・」と、軽いイヤミを言われてしまいました。

そんな、矢先。

そんな、矢先。

そんな矢先、祖母に来客がありました。

聞けば「昔お世話になった社長さんの関係の方と、その部下の新人さん」ということで、祖母は珍しく女将時代の和装でお迎えして、事務スペースの応接間で何やら話し込んでいました。

そして1時間ほど経った後、応接室から出てきた祖母の表情はとても明るいもので、「いいお話ができた!」と上機嫌でした。

そしてその数日後、また同じ方がいらっしゃったのですが、今度はきちんとアポを取っていらしたので私も母も警戒することなく、お茶とお菓子を出してお話しさせていただきました。

その時は普通の世間話や雑談でしたが、どうにも新人さんの風体がチャラついていて、少し違和感がありました。

ところが、しばらくすると、祖母は「あなたたちは下がっていて」と私と母を部屋の外に追い出したのです。

私は不安になりましたが、母と「昔の話をしているのかもしれない、おばあちゃんにとって、私達に聞かせたくない思い出話もあるだろうから」と、二人で部屋を離れました。

謎の契約書、謎の外出

謎の契約書、謎の外出

翌朝5時。

祖母はまた和装で、忙しく動き回る私と母に「今日は用事があるから、銀行に行ってくるから」と言い、8時すぎにいつものタクシーを呼んで、出て行きました。

母は特に気にした様子もありませんでしたが、私にはどうも引っかかりを感じていました。

というのも、会社の契約関係は私が行うので祖母は現在のところ、タッチしていません。

しかし、祖母の手には風呂敷包みで書類のようなものがあり、さらにその中身についての説明もなかったからです。

上機嫌の祖母

上機嫌の祖母

祖母が夕方6時過ぎ、戻ってきました。このご時世とはいえ営業中ということもあり、私は対応出来なかったのですが、古いスタッフさんから「大奥様のご様子が少しおかしいです」と報告を受け、慌てて時間をつくり、事務所に向かいました。

するとそこには、ご機嫌な様子で鼻歌を歌いながら何らかの帳簿をつける祖母の姿があったのです。「あら?どうしたの?」と不思議そうに聞く祖母に対して、私と母、そしてスタッフさんも、明らかな違和感を感じたことを今でもハッキリとおぼえています。

心配した母が話を聞くと祖母は「ちょっとね、いいことがあったのよ。」と返しました。

私がさらに詳しく話を聞いた結果、祖母はまず以下のような話を上機嫌に語っていました。

  • 先日来たのは以前、原野商法詐欺で土地を購入してしまった会社の新人だった人
  • その人が会社を立ち上げ、新人を連れて訪ねてきた
  • そして祖母が騙された土地が再びバブルとなっており、今なら売れると説明された
  • 売却のためには土地の整地とドローンを使った現地調査が必要なので、その工事を200万で依頼した
  • 工事費用は今日、全額振り込みで支払ってきた
  • さらに裏情報として、今度こそ温泉の出そうな土地があると紹介され、その土地も800万で購入した
  • 昔お世話になったから、ということでかなりオマケしてもらい、1000万でまとめてもらった
  • 私の資産だから問題はない

というのです。

私も母も、そしてその場に居た祖母以外の全員が、目の前が真っ暗になる感覚を覚えました。

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金融機関への確認

金融機関への確認

翌朝一番で、私は金融機関に出向き、祖母の1件を話しました。明らかに原野商法詐欺だと思ったからです。

こういう詐欺って、普通は銀行員が取引を止めてくれたりするとニュースでみたことがあり、そののぞみをかけて担当の行員さんにお話を聞きに行ったのです。

しかし、銀行からは「大奥様がいつもと変わらぬご様子でしたし、大口の取引も過去多かったもので、すでに相手へ着金済み」とのことで、申し訳無さそうな顔はしていましたが、結論としては取り合ってもらえませんでした。

商売を長くやっている家だと、こういうこともあるか・・・と、かなり衝撃でした。

もちろん、警察にも相談しようと思い、警察署まで出向いたのですが・・・これも民事だからと相手にされず、詐欺被害としての受理はしてくれないとのことでした。

それでも、諦めない

それでも、諦めない

その後、祖母の様子は相変わらずでしたが、私たち家族はとにかく気を引き締めて事に当たることにしました。

まず、詐欺に遭ってしまった以上、どんな手を使ってでもお金を取り戻すことが最優先だと考えたため、会社の顧問弁護士に相談することにしました。

しかし、その弁護士さんもご高齢で・・・やはり、売買取引は成立していること、祖母も認知症という確定診断が出ているわけでもないし、成年後見人がついているわけでもないので、これ以上のことは期待できないだろうと言われてしまいました。

直接対決前夜

直接対決前夜

そこで私と父母、あと成り行きで事情を知っているスタッフさん以外には、従業員には心配をかけないよう箝口令を敷き、まずは契約書にある業者を特定しようと思いました。

しかし祖母は「私をボケ老人扱いするのか!」と泣いて契約書を頑なに見せようとせず、それどころか、「あんたたちは余計なことをしなくてよろしい!疑うなんて先方に無礼千万でしょう!!」と激怒してしまったのです。

後から分かったことですが、これは認知症の初期症状にも同じようなものがある、ということでした。

しかし、1000万です。変な話ですが、このお金はゆくゆくは、私と母に遺産で入ってくるお金です。そもそも、祖母がこんな詐欺に引っかかるとは誰も思っていなかったのですから、まさかの展開に動揺している部分もあったと思います。

そこで私達は、いくつかの手段で祖母が送金した相手の口座名義を調べ、これに成功しました。(※具体的な方法は協力していただいた方々に御迷惑になるので、ここでは申し訳ありませんが、割愛させていただきます。田舎だと、都内ではマニュアルで不可能なことも含め色々なことがまかり通る、とだけ申し添えておきますね。)

相手への連絡

相手への連絡

送金先から会社名を特定し、私は相手先へ電話し、事情を説明しました。そしてここで私は、大きなミスを犯しました。

契約書を見れているわけではないから、送金先の名義と同名の御社に電話していると、バカ正直に教えてしまったのです。

すると相手からは「そのような社員は当社に在籍していない」と思わぬ返答が返ってきたのです。

そんなはずはない・・・と思い私は「こういう風体の方で、2名いらっしゃっていた」と伝えてみたのですが、これにも「当社は多数の社員がいるし、電話では姿かたちを言われても特定などできるはずがない。そもそも当社と関わりがあるかどうかも怪しい」と取り合ってもらえません。

ここで話を聞いていた父が「一回電話を切って」とジェスチャーで合図してきたので電話を切りますと、父から「相手はおそらく確信犯だと思う」と言いだしたのです。

父いわく、昔もそういった事例があったようで「こういったケースの場合、相手が逃げ切るために偽名を使うもの。

しかも契約書を見れていないと言ってしまっているから、相手はどうとでも言えてしまうよね」と言います。

偽名だと、確かに相手を特定しても、しようもないですよね。

肝心の契約書があれば契約主体がわかりますが、これは祖母が頑なに(というか、泣きわめいて)拒否するので、この方法はもう厳しいと思いました。

ちなみに電話だけで埒が明かないと判断した私たちは、すぐに再度電話をかけます。

「契約の確認も含め、直接会って話す機会を持ちたい」と伝えましたが「個人情報の問題があるので、ご契約者以外に契約の詳細をお伝えすることは出来ないし、そもそも当社の契約かどうかも怪しい。ご契約者が同意し、同席しないのであれば、お会いすることは出来ない」と言われてしまいました。

これも祖母の認知が始まっていることを見越してのことでしょう。

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認知症と詐欺

認知症と詐欺

そうして私達はいま、認知が進んでしまったように見え情緒も不安定な祖母を抱え、相手の業者の情報すら分からないまま、どうしようもない日々を過ごしています。

1000万は泣き寝入りするしかないのでしょうか。何とか取り戻したいと思っていますが、ここまで来てしまうと、もうダメかもしれない・・・と思っています。

あの時、私がバカ正直に言わなければ・・・と後悔しています。

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